景色は、所有するものではなく、切り取るもの。
海が見える。
山が見える。
街の灯りが見える。
それだけで、
土地の価値は確かに上がります。
でも宿をつくる側からすると、
景色があるだけでは、まだ素材です。
どこから見るのか。
どう見せるのか。
そして、
その景色の中でどう過ごしてもらうのか。
そこまで考えて、
初めて景色は商品になる。
「オーシャンビューです。」
そう聞いて現地へ行く。
確かに海は見える。
でも、
立っている時しか見えない。
椅子に座ると窓枠で消える。
ベッドに寝ると空しか見えない。
風呂に入ったら塀しか見えない。
これでは、
せっかくの景色がもったいない。
だから僕は現地へ行くと、
立つ。
座る。
しゃがむ。
時には地面近くまで目線を落とす。
宿でずっと立っている人なんて、
いないからです。
**ソファに座った時。
ベッドに寝た時。
湯につかった時。
その目線から何が見えるのか。**
僕が見たいのは、
そっちです。
そして、
景色は広く見せればいいわけでもありません。
隣の家。
電柱。
道路。
駐車場。
余計なものを切って、
美しいところだけ残した方が強くなることもある。
僕は、
借景という考え方が好きです。
向こうの山も使う。
海も使う。
空も使う。
遠くの街の灯りだって使う。
こちらがお金を払ってつくったものではないのに、
窓の切り方一つで、
自分たちの空間の一部になる。
こんなに贅沢なことはありません。
そして、
景色には一番美しい時間があります。
朝がいいなら、
その景色を見ながら朝食を食べてもらう。
夕景がいいなら、
その時間に酒を飲める場所をつくる。
夜空がいいなら、
照明を考える。
景色と、人の時間を合わせる。
そうすると、
窓の位置も、
風呂の場所も、
ベッドの向きも変わってきます。
だから僕にとって景色は、
建築が完成してから、
「ちなみに海も見えます」
と付け加えるものではありません。
景色から、建築を考えることだってある。
宿泊事業なら、
それはそのまま商品力にもなります。
窓の向こうに海がある。
湯船の先に山がある。
ベッドから朝日が見える。
その一枚を見て、
「ここに泊まりたい。」
と思う人がいる。
海が見える土地を持つことと、
海を商品にすることは違う。
景色は、所有するものではなく、切り取るもの。
そして、
その切り取った景色の中で、
人にどう過ごしてもらうのか。
そこまで考えるのが、
僕にとっての宿づくりです。
