#032

「みんなが来やすい店をやりたい」が、一番怖い。

2026秋 | EPISODE

誰にでも来てほしい店は、誰のための店でもなくなる。

誰にでも来てほしい店は、誰のための店でもなくなる。

飲食の仕事をしている人と話していると、
たまにこんな会話になります。
「将来、自分で店をやりたいです。」
いいね。
「どんな店をやりたいの?」
「みんなが来やすい店をやりたいです。」
本人は、
すごくいいことを言った顔をしている。
でも僕の頭の中では、
その瞬間、
超危険アラートが鳴り響いています。
(笑)

みんなって、誰?
やばいぞ。またこのパターンだ。。

店づくりは、
選択の連続
場所。
広さ。
席数。
料理。
値段。
内装。
営業時間。
そのたびに、
「誰のため?」
が必要になります。
若い人にも来てほしいから値段を下げる。
家族にも来てほしいからメニューを増やす。
一人客も入りやすくする。
宴会も取れるようにする。
全部やる。
すると、
いつの間にか、
何の店なのか分からなくなる。
誰も排除したくない。
その気持ちは分かります。
僕だって、
できるだけ多くのお客様に来てほしい。
でも、
「誰でも来てください」と、
「誰のための店か分からない」は違う。

最初に決めるのは、
誰に一番喜んでもらいたいのか。
その人は、
何を食べたいのか。
いくら払うのか。
どんな時間を過ごしたいのか。
そこが見えてくれば、
料理も、
値段も、
空間も、
サービスも決まってきます。
そして面白いことに、
誰かに強く刺さる店の方が、
結果としていろんな人が来てくれることもある。

逆に、
最初から全員に合わせると、
全部が少しずつ薄くなる。
料理も普通。
値段も普通。
内装も普通。
サービスも普通。
悪くない。
でも、
わざわざその店へ行く理由もない。
だから、
「みんなが来やすい店をやりたい。」
と聞くと、
僕は訊きます。

その“みんな”って誰?

そこまで見えてきて、
ようやく店の輪郭が出てくる。
物件を探す前に。
厨房機器を選ぶ前に。
店名を考える前に。
まず、

誰に、何を、どう喜んでもらうのか。

「みんなが来やすい店。」
その言葉が出た瞬間、
本人には聞こえていないけれど、

僕の頭の中では今日も、
ウー、ウー、ウー。
と、
かなり大きな警報が鳴っています。
(笑)
たぶんメッチャ顔にも出ています。
(笑)(笑)

シンスズキ|事業家・経営参謀
ワンスインアライフタイム株式会社のオーナーでもあり、飲食、宿泊、不動産、建築など、いくつかの事業に人生をかけて取り組んでいます。ときどき、他社の経営にも首を突っ込みます。