料理人だけが、店をつくっているわけではない。
飲食店というと、
料理人が主役に見えます。
もちろん料理は大事です。
うまくなければ、
僕はいい店だとは思わない。
でも、
料理をつくる人だけが、店をつくっているわけではありません。
入口で迎える人。
電話を取る人。
料理を運ぶ人。
掃除する人。
最後に見送る人。
全員が、
その日の店をつくっています。
僕は料理人ではありません。
だからなのか、
料理以外のことも、ものすごく気になります。
入口。
照明。
椅子。
音楽。
器。
温度。
サービス。
電話。
料理を出すタイミング。
帰りの挨拶。
美しい店でも、
人が冷たければ残念な店になる。
逆に古い店でも、
人が良くて、
なぜかまた行きたくなる店がある。
店の空気は、人がつくる。
例えば電話。
お客様にとって、
店との最初の接点かもしれません。
そこで、
やたら声が大きい。
やたら早口。
本人に悪気なんてない。
でも、
残念賞。
まだ一皿も食べていないのに、
店の印象はもう始まっています。
予約も同じです。
名前を覚えている。
苦手なものを覚えている。
記念日だったことを覚えている。
でも、
これ見よがしにやらない方が粋だと思っています。
「前回これ飲まれてましたよね。」
より、
「前回気に入られていたものの親戚を、ちょっと仕入れてみたんです。」
僕なら、
こっちの方が嬉しい。
「覚えていますよ」というサービスではなく、
覚えていたから、何かしておいた。
しかも、
さらっと。
僕はそういうサービスが好きです。
そして、
料理人が最高の状態までつくった一皿も、
最後はサービスの人に渡されます。
運ぶのが遅ければ、
温度が落ちる。
置き方が雑なら、
料理まで雑に見える。
だからホールは、
料理をA地点からB地点へ運ぶ仕事ではない。
料理人から受け取った一皿を、
お客様のところで完成させる仕事でもある。
僕は、
新人だから何も分からなくて当たり前、
とは思っていません。
料理名も、
席番号も、
電話の取り方も、
まだ知らないかもしれない。
でも、
何が善かれかを考えることは、初日からできる。
やってみる。
違った。
直す。
またやる。
知らないことと、
考えないことは、
まったく違います。
アルバイトだから。
ホールだから。
新人だから。
そうやって、
自分の仕事を小さくしないでほしい。
お客様が困っている。
気づいた。
まだ自分で判断できないなら、
店長に伝えればいい。
それも立派な仕事です。
僕自身、
今ではほとんど店にいません。シーラカンス並です。
だから、
今日の店をつくっているのは、
今日そこにいるみんなです。
料理人も。
サービスも。
アルバイトも。
店長も。
そして僕が久しぶりに食べに行った時、
「あれ、こんなにいい店だったっけ。」
と思わせてほしい。
それなら最高です。
料理をつくらない人も、
店をつくっている。
今日一人のお客様に気づく。
今日一つ、店を良くする。
その積み重ねが、
いい店をつくるのだと思っています。
