#026

古いから壊す、は一番最後でいい。

2026秋 | THOUGHT

残っている価値を見つけて、もう一度事業に戻す。

残っている価値を見つけて、もう一度事業に戻す。

古い建物を見ると、

「壊して新築した方が早いですよ」

という話になりやすい。

実際、

その方が合理的なこともあります。

僕も、

何でも古いものを残せばいいとは思っていません。

でも、

壊すのはいつでもできる。

だから、その前に一度だけ考えたい。

これ、本当に要らないのかな。

古い家。

使われなくなった旅館。

昔の店舗。

長い間、誰も手を入れていない建物。

確かに大変です。

寒い。

暗い。

間取りも今の生活に合わない。

設備も古い。

耐震も考えなければならない。

直すにも当然お金がかかる。

だったら、

全部壊して新しく建てる。

その判断が正しいこともあります。

でも僕は、

解体する前にかなり細かく見ます。

柱。

梁。

天井。

建具。

庭。

石。

窓から見える景色。

昔の人が、

なぜここに部屋をつくったのか。

なぜこちらに建物を向けたのか。

今の建物としては不便でも、

そこにしかないものが残っていることがある。

新築は自由です。

ゼロから考えられる。

だからこそ、

どこにでもあるものもつくれてしまう。

一方で古い建物には、

こちらでは決められないものがあります。

百年前の柱。

妙な段差。

不思議な間取り。

大きすぎる庭石。

今なら絶対こんなところにはつくらない、

という場所にある窓。

邪魔だと思えば全部邪魔です。

でも見方を変えれば、

それが個性になることもある。

特に宿は、

新しいこと自体が価値とは限らないと思っています。

お客様は、

新築の建物を見に来るわけではない。

そこでしかできない時間を過ごしに来る。

だったら、

その場所に積み重なってきた時間を、

少し残した方がいいこともある。

ただし、

僕は保存活動をしているわけではありません。

古いから残す。

歴史があるから残す。

それだけでは事業にならない。

使いにくいなら変える。

暗いなら開ける。

寒いなら直す。

どうにもならないなら壊す。

僕が考えるのは、

「これを残した方が、商品として強くならないか。」

ということです。

古い建具を一枚残す。

昔からある庭を、

新しくつくった浴室から見る。

古い梁を見せながら、

照明は現代のものにする。

全部昔に戻す必要はありません。

その建物が持っている時間を使いながら、

今の快適さをつくればいい。

そして当然、

数字も見ます。

残す方が新築より高くなることもある。

改修を始めたら、

次から次へと問題が出ることもある。

そんな時に、

「歴史がありますから」

だけで、

オーナーのお金を使い続けるわけにはいきません。

残す価値。

改修費。

完成後の商品力。

売上。

維持費。

全部を見て決める。

美しいだけでも駄目だし、安いだけでも駄目。

使われなくなった建物も、

価値がなくなったとは限りません。

使い方が、まだ見つかっていないだけかもしれない。

実際に見に行くと、

たまにあります。

「いや、これ、磨いたらものすごく良くなるんじゃない?」

という瞬間が。

建物全部ではないかもしれない。

庭かもしれない。

景色かもしれない。

温泉かもしれない。

一本の梁かもしれない。

それを見つけたら、

そこから考える。

何を残す。

何を捨てる。

何を足す。

そして、

どう商売にする。

僕にとってリノベーションは、

古い建物を綺麗にする仕事ではありません。

残っている価値を見つけて、
もう一度事業に戻す仕事です。

だから、

古いから壊す。

その判断は一番最後でいい。

散々見て、

数字にもぶつけて、

「やっぱり壊そう」

なら、普通に壊す。

でも、

一度壊したものは戻せない。

だったら、その前に一度くらい、

本気で、

「この建物、まだ何かできないかな。」

と考えてみたい。

そこから、

思いもしなかった事業が始まることがあります。

シンスズキ|事業家・経営参謀
ワンスインアライフタイム株式会社のオーナーでもあり、飲食、宿泊、不動産、建築など、いくつかの事業に人生をかけて取り組んでいます。ときどき、他社の経営にも首を突っ込みます。