率に囚われて、絶対額という経営の大局を見誤ってはならない。
原価が上がった。
だから値上げする。
原価率が30%だから、売価はいくら。
もちろん、
原価はものすごく大事です。
でも、
原価から逆算するだけでは、料理屋の値段は決められない。
例えば、
原価1,000円。
原価率30%なら、売価は約3,333円。
計算としては正しい。
でも、
その料理を3,333円で食べたいかどうかは、まったく別の話です。
僕は外食が好きです。
良い店には、できるだけ行きたい。
それでも何万円もする店へ、何も考えずに行けるわけではありません。
僕の場合、飲食なら一人2万円くらいが、
「よし、行ってみよう」
と思える一つの臨界点です。
それを超えると、
「本当に、その値打ちがあるのかな。」
1万円でも高かったと思う店はある。
2万円でも、
「これは良かった」
と思える店もある。
結局、
高い・安いは、金額そのものより、払った金額に対して何を感じたかで決まる。
僕はそう思っています。
だから値上げする時も、
値段だけを上げたくない。
何か一つでも、
前より良くできないかと考える。
原材料費も、人件費も、光熱費も上がる。
店を続けるために値上げしなければならない時もあります。
商売だから、それは仕方がない。
でも、
「原価が上がったので値上げしました。」
だけで終われば、
それは店側の都合です。
だから値上げする時こそ、
もう一度、商品を見る。
そして、もう一つ。
現場で数字を見ていると、
どうしても「率」に目が向きます。
原価率30%。
人件費率30%。
FL比率何%。
もちろん、管理するには大切な数字です。
でも経営では、
率より先に、絶対額を見るべき場面があります。
例えば、
3,000円の商品を売って1,000円残るのか。
5,000円の商品を売って1,500円残るのか。
後者の方が原価率が高かったとしても、
一つ売ることで残る利益の絶対額が大きいなら、
経営としてはそちらの方が正しいことだってある。
逆に、
原価率をきれいに守った結果、
商品に魅力がなくなり、
売上そのものが落ちてしまったら、
何のために率を守っているのか分からない。
現場では、
率は管理しやすい。
だからこそ、
率に固執しやすい。
でも、
経営の目的は、原価率を守ることではありません。
売上をつくり、
必要な利益を絶対額で残し、
店を良くし、
働く人に還元し、
そしてお客様にまた来てもらうことです。
僕が昔から大事にしている、
良心的な価格。
これは安売りという意味ではありません。
店にも無理がない。
お客様にも無理がない。
店には必要な利益が残り、
お客様には、
「この内容で、この値段ならいい」
と思ってもらえる。
その場所を探すことです。
だから僕は、
値段を上げる助言もするし、
そのまた逆も伝えます。
値上げしてお客様が大きく減ったなら、
こちらが考えた価値と、
お客様が感じた価値にズレがあったのかもしれない。
だったら、
もう一度考えればいい。
戻した方がいいなら、戻す。
商品を変えた方がいいなら、変える。
価格にプライドを持つより、
店を良くすることにプライドを持ちたい。
「うまかった。また来よう。」
と思ってくれるか。
そして、その「また来よう」に、
無理のない値段になっているか。
料理屋の値段を決めるのは、
原価ではない。
原価も、利益も、お客様が感じる価値も、全部です。
僕にとって値決めとは、
その答えを探し続けることなんだと思います。
