#022

料理屋の値段を決めるのは、原価ではない。

2026秋 | THOUGHT

率に囚われて、絶対額という経営の大局を見誤ってはならない。

原価が上がった。

だから値上げする。

原価率が30%だから、売価はいくら。

もちろん、

原価はものすごく大事です。

でも、

原価から逆算するだけでは、料理屋の値段は決められない。

例えば、

原価1,000円。

原価率30%なら、売価は約3,333円。

計算としては正しい。

でも、

その料理を3,333円で食べたいかどうかは、まったく別の話です。

僕は外食が好きです。

良い店には、できるだけ行きたい。

それでも何万円もする店へ、何も考えずに行けるわけではありません。

僕の場合、飲食なら一人2万円くらいが、

「よし、行ってみよう」

と思える一つの臨界点です。

それを超えると、

「本当に、その値打ちがあるのかな。」

1万円でも高かったと思う店はある。

2万円でも、

「これは良かった」

と思える店もある。

結局、

高い・安いは、金額そのものより、払った金額に対して何を感じたかで決まる。

僕はそう思っています。

だから値上げする時も、

値段だけを上げたくない。

何か一つでも、

前より良くできないかと考える。

原材料費も、人件費も、光熱費も上がる。

店を続けるために値上げしなければならない時もあります。

商売だから、それは仕方がない。

でも、

「原価が上がったので値上げしました。」

だけで終われば、

それは店側の都合です。

だから値上げする時こそ、

もう一度、商品を見る。

そして、もう一つ。

現場で数字を見ていると、

どうしても「率」に目が向きます。

原価率30%。

人件費率30%。

FL比率何%。

もちろん、管理するには大切な数字です。

でも経営では、

率より先に、絶対額を見るべき場面があります。

例えば、

3,000円の商品を売って1,000円残るのか。

5,000円の商品を売って1,500円残るのか。

後者の方が原価率が高かったとしても、

一つ売ることで残る利益の絶対額が大きいなら、

経営としてはそちらの方が正しいことだってある。

逆に、

原価率をきれいに守った結果、

商品に魅力がなくなり、

売上そのものが落ちてしまったら、

何のために率を守っているのか分からない。

現場では、

率は管理しやすい。

だからこそ、

率に固執しやすい。

でも、

経営の目的は、原価率を守ることではありません。

売上をつくり、

必要な利益を絶対額で残し、

店を良くし、

働く人に還元し、

そしてお客様にまた来てもらうことです。

僕が昔から大事にしている、

良心的な価格。

これは安売りという意味ではありません。

店にも無理がない。

お客様にも無理がない。

店には必要な利益が残り、

お客様には、

「この内容で、この値段ならいい」

と思ってもらえる。

その場所を探すことです。

だから僕は、

値段を上げる助言もするし、

そのまた逆も伝えます。

値上げしてお客様が大きく減ったなら、

こちらが考えた価値と、

お客様が感じた価値にズレがあったのかもしれない。

だったら、

もう一度考えればいい。

戻した方がいいなら、戻す。

商品を変えた方がいいなら、変える。

価格にプライドを持つより、
店を良くすることにプライドを持ちたい。

「うまかった。また来よう。」

と思ってくれるか。

そして、その「また来よう」に、

無理のない値段になっているか。

料理屋の値段を決めるのは、

原価ではない。

原価も、利益も、お客様が感じる価値も、全部です。

僕にとって値決めとは、

その答えを探し続けることなんだと思います。

シンスズキ|事業家・経営参謀
ワンスインアライフタイム株式会社のオーナーでもあり、飲食、宿泊、不動産、建築など、いくつかの事業に人生をかけて取り組んでいます。ときどき、他社の経営にも首を突っ込みます。