#018

「流行っているからサウナ」を、僕が嫌う理由。

2026夏 | THOUGHT

宿の相談を受けると、

「サウナをつくりたい」

という話が出ることがある。

僕はサウナが嫌いなわけではない。

オーナー自身が本当にサウナが好きで、

「自分ならこういうサウナに入りたい」

というものがあるなら、

むしろ徹底的にやればいいと思う。

僕が嫌なのは、

「今、流行っているから。」

という理由だけでサウナをつくることだ。

流行っているものを足せば、

事業が強くなる。

そんなに簡単な話ではない。

——

先日、

ある宿泊施設の企画について相談を受けた。

古い建物を活かして、

一棟貸しの宿にしたいという話だった。

その中で、

「サウナをつくりたい」

という要望があった。

僕はまず聞いた。

「サウナ、好きなんですか?」

これ、僕にとっては結構大事な質問だ。

本当に好きならいい。

毎週サウナへ行っている。

旅先でもサウナのある宿を選ぶ。

温度にもこだわりがある。

水風呂にもこだわる。

外気浴する場所まで自分なりの理想がある。

そこまで好きなら、

僕も話を聞きたい。

その人にしかつくれないサウナが、

できるかもしれないからだ。

でも話を聞いていくと、

「最近人気ですよね」

「宿にはあった方がいいかなと思って」

「集客できそうなので」

という理由だったりする。

そうなると僕は一度止めたくなる。

それ、本当に必要ですか。

その土地には何があるのか。

建物には何があるのか。

どんな人に来てもらいたいのか。

その人は、

なぜわざわざここまで来るのか。

そして、

いくら払ってくれるのか。

まずそこを考える。

サウナは、

その答えの一つになることはある。

でも、

最初から答えではない。

その案件には、

別のものがあった。

温泉だ。

だったら僕は、

新しくサウナを付けることより、

まず温泉の価値を最大にすることを考えたい。

ただ室内に浴槽を置くのではなく、

外へ出る。

空を見る。

風を感じる。

季節を感じる。

庭を見る。

その土地の空気の中で湯につかる。

露天風呂にした方が、

この宿は強くなるんじゃないか。

僕はそう考えた。

サウナか。

露天風呂か。

設備だけを比べているわけではない。

どちらの方が、

この場所でしかできない体験になるのか。

そこを比べている。

サウナは、どこにでもつくれる。

もちろん、

ものすごくいいサウナをつくるなら、

設計も設備も運営も奥が深い。

でも、

流行っているサウナを、

流行っているという理由だけで付けるなら、

競合も同じことができる。

一方で、

その土地にある温泉。

その土地の景色。

庭。

風。

古い建物。

そういうものは、

他の誰かが簡単にはコピーできない。

だから僕は、

流行を無視しているわけではない。

むしろ見る。

何が売れているのか。

人は何を求めているのか。

どんな宿が選ばれているのか。

プロなんだから、

市場を見ないわけない。

でも、流行を知ることと、流行に乗ることは違う。

流行っている。だからやる。

ではなく、

なぜ流行っているんだろう。

そこまで考えたい。

そして、

その結果やっぱりサウナなら、

つくればいい。

しかも、

やるなら中途半端にやらない方がいい。

本当にサウナが好きなオーナーなら、

僕はその偏愛を大切にしたい。

「普通はこうですよ」

なんて言って、

その人の変なこだわりを消したくない。

むしろ、

その変態的なくらいのこだわりが、

商品になることがある。

好きな人は細かい。

普通の人が気にしないところまで気にする。

その細かさが、

最後に圧倒的な差になることがある。

だから、

僕が否定したいのはサウナではない。

理由のないサウナだ。

これは飲食店でも同じだと思う。

流行っている料理だから入れる。

流行っている内装だから真似する。

流行っている業態だから出店する。

SNSで人気だから取り入れる。

それだけでは、

僕は怖い。

流行は変わる。

でも、

店は残る。

建物も残る。

借金も残る。

スタッフもいる。

運営も続く。

だから、

流行が終わったあとに、

何が残るのか。

そこまで考えてから投資したい。

あの宿については、

僕はサウナより露天風呂の方がいいと思った。

そして話をしていくと、

オーナーも、

「確かに、その方がいい」

となった。

サウナが嫌いだから勝った、

という話ではない。

その場所にとって、

より強い答えを一緒に見つけただけだ。

僕が事業開発でやりたいのは、

たぶん、こういうことなのだと思う。

流行っているものを持ってくることではない。

その場所を見て。

その人を見て。

そこにあるものを見て。

何を足すべきか。

何を足さないべきか。

何を磨くべきか。

考える。

新しいものを足すことだけが、

プロデュースではない。

やらないことを決めるのも、

プロデュースだ。

僕はそう思っている。

シンスズキ|事業家・経営参謀
ワンスインアライフタイム株式会社のオーナーでもあり、飲食、宿泊、不動産、建築など、いくつかの事業に人生をかけて取り組んでいます。ときどき、他社の経営にも首を突っ込みます。