いいサービスって何だろう。
丁寧な言葉遣い。
正しい料理説明。
きれいな所作。
もちろん全部大事だ。
でも僕は、
それより前にあるものを大切にしている。
気づくこと。
お客様が来たことに気づく。
何かを探していることに気づく。
困っていることに気づく。
帰ろうとしていることに気づく。
サービスは、
気づかなければ始まらない。
——
僕は、
「いらっしゃいませ」
だけでお客様を迎えることに、
昔から少し違和感があった。
もちろん、
いらっしゃいませと言う。
でも、
その前でも、その後でもいい。
「こんにちは。」
とか、
「こんばんは。」
があっていいと思っている。
だって、
挨拶だから。
店員がお客様に言う、
業務上の掛け声だけではない。
人と人が会った。
だから挨拶する。
僕には、
その方が自然だ。
帰る時も同じ。
「ありがとうございました。」
もちろん言う。
でも、
それだけでは僕には少し寂しい。
外が雨なら、
「足元お気をつけください。」
遠方から来てくださったなら、
「お気をつけてお帰りください。」
遅い時間なら、
「おやすみなさい。」
何度も来てくださっている方なら、
「また待ってます。」
その人と、
その時に合った言葉が、
何か一つあっていい。
これを、
「退店時にはこの四種類から選んで言ってください」
とマニュアルにした瞬間、
たぶん違うものになる。
自分でその人を見て、
自分で言葉を選んでほしい。
僕がサービスで求めているのは、
そういうことだ。
目の前の人が、
今どう感じているんだろう。
何をしてほしいんだろう。
どうしたら、
もう少し気持ちよく過ごしてもらえるだろう。
そこに興味を持てる人は、
サービスがどんどん良くなる。
僕はそう思っている。
そしてこれは、
お客様だけの話ではない。
一緒に働いている人にも同じだ。
厨房が今、
ものすごく忙しそうだ。
だったら、
今この質問をするのはやめよう。
隣のスタッフが、
四卓重なって困っている。
だったら一卓持とう。
誰かが失敗した。
責める前に、
何が起きたのかを見る。
気づく人は、
仲間にも気づく。
そういう人が何人もいる店は、
強い。
最初は、
気づいたことを店長に伝えるだけでもいい。
そのうち、
自分で判断できることが増えていく。
いつか、
誰かに言われなくても動けるようになる。
僕がみんなに期待しているのは、
ただ、
「言われたことをやる人」
になることではない。
目の前にいる人を見る。
お客様を見る。
仲間を見る。
店を見る。
そして、
気づく。
僕は、
いいサービスの始まりは、
ずっとそこにあると思っている。
