その景色を、いくらの価値に変えられるか。
海が見える。
山が見える。
街の灯りが見える。
不動産の世界では、
「眺望良好」
の一言で片づけられることもあります。
でも僕は、
景色をそんなに軽く考えていません。
景色には、値段がある。
特に宿泊事業では、
それがそのまま事業の強さになることがあります。
僕は土地を見に行くと、
まず景色を見ます。
海が見えるか。
山が見えるか。
空がどれくらい見えるか。
朝はどうか。
夕方はどうか。
夜は何が残るか。
そして、
どこに立った時が一番美しいか。
同じ「海が見える」でも、
少し見えるのと、
水平線まで抜けるのとでは、
まったく違います。
そして、
もっと大切なのは、
建物の中からどう見えるか。
土地に立った時は絶景でも、
建物を建てたら台無しになることがある。
逆に、
一見それほどでもない土地が、
建物の位置を少し変えるだけで化けることもあります。
床を少し上げる。
窓の位置を変える。
電柱を消す。
隣家を消す。
道路を消す。
そして、
海だけを残す。
山だけを残す。
僕は、
借景という考え方が好きです。
遠くの山も、
海も、
空も、
街の灯りも、
窓の切り取り方一つで、
自分の空間の一部になる。
だから、
小さな建築でも、
景色まで含めれば、
ものすごく豊かな場所をつくることができます。
そして宿泊事業では、
その景色が、
売上に変わる。
家具なら買える。
設備も買える。
料理だって研究できる。
でも、
その土地から見える景色は、他の宿には真似できない。
だから僕は、
景色のある土地を見ると、
「すごいな」
で終わりません。
「この景色はいくらになるんだろう。」
と考えます。
品がないように聞こえるかもしれない。
でも、
価値をきちんと事業に変えられれば、
建物にも、
庭にも、
サービスにも、
働く人にも、
ちゃんとお金をかけられる。
そして、
その場所を長く守ることができます。
価値があるものを安く売ることが、
良心的だとも思いません。
一泊30万円の価値があるなら、
30万円で売ればいい。
その代わり、
30万円払った人に、
「ここへ来てよかった。」
と思ってもらう責任があります。
だから、
景色のいい土地で考えるのは、
格好いい建物を建てることだけではありません。
どこに建てるか。
どちらを向けるか。
どこに座るか。
どこで風呂に入るか。
朝、目を覚ました時に何が見えるか。
夕方、酒を飲む時に何が見えるか。
人が実際に過ごす目線から、景色を考える。
景色は、
僕らがつくったものではありません。
その場所にあるものを、
一番いい形で借りる。
そして、
事業として価値に変える。
景色には、値段がある。
その値段を最大にするのも、
台無しにするのも、
事業と建築のつくり方次第だと思っています。
