#016

景色には、値段がある。

2026秋 | THOUGHT

その景色を、いくらの価値に変えられるか。

その景色を、いくらの価値に変えられるか。

海が見える。

山が見える。

街の灯りが見える。

不動産の世界では、

「眺望良好」

の一言で片づけられることもあります。

でも僕は、

景色をそんなに軽く考えていません。

景色には、値段がある。

特に宿泊事業では、

それがそのまま事業の強さになることがあります。

僕は土地を見に行くと、

まず景色を見ます。

海が見えるか。

山が見えるか。

空がどれくらい見えるか。

朝はどうか。

夕方はどうか。

夜は何が残るか。

そして、

どこに立った時が一番美しいか。

同じ「海が見える」でも、

少し見えるのと、

水平線まで抜けるのとでは、

まったく違います。

そして、

もっと大切なのは、

建物の中からどう見えるか。

土地に立った時は絶景でも、

建物を建てたら台無しになることがある。

逆に、

一見それほどでもない土地が、

建物の位置を少し変えるだけで化けることもあります。

床を少し上げる。

窓の位置を変える。

電柱を消す。

隣家を消す。

道路を消す。

そして、

海だけを残す。

山だけを残す。

僕は、

借景という考え方が好きです。

遠くの山も、

海も、

空も、

街の灯りも、

窓の切り取り方一つで、

自分の空間の一部になる。

だから、

小さな建築でも、

景色まで含めれば、

ものすごく豊かな場所をつくることができます。

そして宿泊事業では、

その景色が、

売上に変わる。

家具なら買える。

設備も買える。

料理だって研究できる。

でも、

その土地から見える景色は、他の宿には真似できない。

だから僕は、

景色のある土地を見ると、

「すごいな」

で終わりません。

「この景色はいくらになるんだろう。」

と考えます。

品がないように聞こえるかもしれない。

でも、

価値をきちんと事業に変えられれば、

建物にも、

庭にも、

サービスにも、

働く人にも、

ちゃんとお金をかけられる。

そして、

その場所を長く守ることができます。

価値があるものを安く売ることが、

良心的だとも思いません。

一泊30万円の価値があるなら、

30万円で売ればいい。

その代わり、

30万円払った人に、

「ここへ来てよかった。」

と思ってもらう責任があります。

だから、

景色のいい土地で考えるのは、

格好いい建物を建てることだけではありません。

どこに建てるか。

どちらを向けるか。

どこに座るか。

どこで風呂に入るか。

朝、目を覚ました時に何が見えるか。

夕方、酒を飲む時に何が見えるか。

人が実際に過ごす目線から、景色を考える。

景色は、

僕らがつくったものではありません。

その場所にあるものを、

一番いい形で借りる。

そして、

事業として価値に変える。

景色には、値段がある。

その値段を最大にするのも、

台無しにするのも、

事業と建築のつくり方次第だと思っています。

シンスズキ|事業家・経営参謀
ワンスインアライフタイム株式会社のオーナーでもあり、飲食、宿泊、不動産、建築など、いくつかの事業に人生をかけて取り組んでいます。ときどき、他社の経営にも首を突っ込みます。