売上が一億円ある。
聞こえはいい。
でも、一億円売って一円も残っていなければ、
僕にはあまり意味がない。
逆に、売上はそれほど大きくなくても、
ちゃんと利益が残る。
働く人に還元できる。
次の投資もできる。
僕は、そちらの事業の方が強いと思っている。(昔は真逆の思考でしたが。)
事業を考える時、
僕が最後に見ているのは、
「で、いくら残るの?」という、とても単純なことだ。
(昔はいくら売れるの?でしたが)
——
売上という数字は分かりやすい。
一億円。
三億円。
十億円。
大きければ大きいほど、
なんとなく会社も大きく見える。
だから僕も当然、売上は見る。
でも、
売上だけを見て事業を判断することは、ほとんどない。
例えば、
一億円売って、
最後に一千万円残る事業。
同じ一億円を売って、
ほとんど何も残らない事業。
売上だけ見れば、
同じ一億円だ。
でも僕にとっては、
全く違う事業だ。
飲食店をやっていると、
これはものすごくよく分かる。
お客様がたくさん来る。
店は満席。
予約も取れない。
スタッフも忙しく働いている。
売上も上がっている。
傍から見れば、
ものすごく繁盛しているように見える。
でも、
食材原価が高すぎる。
人件費がかかりすぎる。
家賃が高い。
光熱費も高い。
設備も壊れる。
修繕もある。
決済手数料もある。
全部払ったら、
「あれ、何が残ったんだ?」
ということが普通にある。
これは宿泊事業でも同じだ。
一泊30万円で売れた。
それだけ聞けば、
ものすごく儲かりそうに聞こえる。
でも、
一泊30万円という数字だけでは、
僕には何も分からない。
年間何泊売れるのか。
清掃はいくらかかるのか。
料理をどうするのか。
サービススタッフは必要なのか。
予約をどう取るのか。
建物の維持費はいくらなのか。
温泉や庭の管理はいくらかかるのか。
だから僕は、
「一泊いくらで売れます」
と聞いても、
それだけではあまり興奮しない。
その次に知りたい。
「で、いくら残るの?」
事業開発でも同じだ。
格好いい企画がある。
建築も素晴らしい。
場所もいい。
話題にもなりそうだ。
僕はそういうものが大好きだから、
放っておくと、いくらでも夢中になってしまう。
だからこそ、
意識的に数字へ戻る。
いくら投資するのか。
いくら売れるのか。
粗利はいくらなのか。
固定費はいくらなのか。
何年で投資を回収するのか。
借入をするなら、
返済したあとにいくら残るのか。
そして、
想定より売上が二割落ちても耐えられるのか。
僕は事業計画を考える時、
うまくいった時の数字だけではなく、
少し失敗した時の数字を見る。
事業計画なんて、
数字を良く見せようと思えば、
いくらでも良くできる。
客単価を少し上げる。
稼働率を少し上げる。
原価率を少し下げる。
それだけで、
Excelの中では素晴らしい会社ができる。
でも、
現実の商売はExcelほど素直ではない。
雨も降る。
雪も降る。
台風も来る。
人も辞める。
機械も壊れる。
食材も値上がりする。
工事費も上がる。
競合もできる。
だから、
少しくらいうまくいかなくても死なない事業にしておく。
僕はその方が大切だと思っている。
もちろん、
利益だけを追えばいいわけでもない。
料理の質を落とす。
人を減らす。
サービスを削る。
建築も家具も安くする。
それで利益率だけを上げても、
お客様が来なくなったら意味がない。
難しいのは、
価値を落とさずに、利益を残すこと。
僕らは商売をやっている。
実際のお金を使っている。
そこで働く人がいる。
取引先がいる。
借りたお金は返さなければならない。
店をつくれば、
その店を守らなければならない。
だから僕は、
プロとして商売をしている以上、
利益を残すことは責任だと思っている。
売上をつくるのも難しい。
でも、
売上をつくりながら、
価値を落とさず、
人にも還元して、
必要な投資もして、
最後にちゃんと利益を残す。
僕は、その方がずっと難しいと思っている。
失敗すれば修正する。
数字から逃げない。
守るべきものを守る。
それが、
商売をするプロとしての仕事だと思っている。
