#010

たぶん揉める。絶対揉める。だから僕らが間に入る。

2025冬 | THOUGHT

店をやる人と、お金を出す人。

相性が良ければ最高の組み合わせに見える。

でも、勢いと善意だけで始めると、たぶんどこかで揉める。

だから僕らは、出会わせるだけでは終わらない。

——

店をやりたい人がいる。

お金を出して、その店を支えたい人がいる。

だったら二人を引き合わせればいい。

一見、とても簡単に見える。

でも僕は、

かなりの確率で揉めると思っている。

最初はいい。

「やりましょう」

「面白そうですね」

と盛り上がる。

店ができる。

オープンする。

お客様が来る。

みんな嬉しい。

問題は、そのあとだ。

思ったほど利益が出なかったらどうするのか。

追加のお金が必要になったら誰が出すのか。

利益が出たら、どう分けるのか。

設備が壊れたら誰が払うのか。

人を増やすのは誰が決めるのか。

店主はどこまで自由に決められるのか。

お金を出した人は、どこまで経営に口を出せるのか。

店主が辞めたくなったらどうするのか。

出店パートナーが途中で抜けたくなったらどうするのか。

こういう話は、始める時にはあまりしたくない。

未来を見て盛り上がっている時に、

「別れる時の話をしましょう」

なんて言いたくないからだ。

だから、

「まあ、その時は話し合えばいいですよ」

となる。

僕は、それが一番怖い。

その時になったら、もう利害が違っているからだ。

どちらが悪いわけでもない。

店を運営している人には、その人の生活がある。

お金を出した人には、その人のお金がかかっている。

立場が違えば、見える景色が違う。

僕は仕事柄、こういう場面をずいぶん見てきた。

人と人が組んで商売をすると、どこで意見が食い違うのか。

何を曖昧にすると、あとで問題になるのか。

どんな小さな違和感が、数年後に大きな揉め事になるのか。

揉め事を整理することは、僕の十八番で本業中の本業だ。

揉め事のプロとしての仕事の流儀は、揉めてから仲裁することではない。

どこで揉めるかを知っているから、最初から揉めにくい形をつくることだ。

だから僕らが間に入る。

単に、

「お金を出してくれる人を紹介します」

「店をやってくれる人を紹介します」

というマッチングはしない。

誰が何を担うのか。

誰が何を決められるのか。

お金をどう出すのか。

利益をどう分けるのか。

追加資金が必要になったらどうするのか。

誰かが抜ける時にはどうするのか。

うまくいかなかった時に、どう終わるのか。

始める前に、終わり方まで決めておく。

そして、始まったあとも僕らが間にいる。

店主の話も聞く。

出店パートナーの話も聞く。

必要なら、同じテーブルにつける。

どちらか一方の味方になるのではない。

僕らが守るのは、

店と、暖簾と、その関係が長く続くこと。

善意を疑っているわけではない。

むしろ逆だ。

良い関係を長く続けたいからこそ、

善意だけに頼らない。

僕らが介在する意味は、そこにあると思っている。

店をやる力はあるけれど、お金がない人。

お金はあるけれど、自分では店を運営できない人。

暖簾と店づくりの経験を持つ僕ら。

この三者が、それぞれの役割を理解して組めたら。

今までなら生まれなかった店が、生まれるかもしれない。

そして、それが十年、二十年と続く店になるかもしれない。

そこまでできて初めて、

暖簾を分けた意味がある。

シンスズキ|事業家・経営参謀
ワンスインアライフタイム株式会社のオーナーでもあり、飲食、宿泊、不動産、建築など、いくつかの事業に人生をかけて取り組んでいます。ときどき、他社の経営にも首を突っ込みます。