店をやる人と、お金を出す人。
相性が良ければ最高の組み合わせに見える。
でも、勢いと善意だけで始めると、たぶんどこかで揉める。
だから僕らは、出会わせるだけでは終わらない。
——
店をやりたい人がいる。
お金を出して、その店を支えたい人がいる。
だったら二人を引き合わせればいい。
一見、とても簡単に見える。
でも僕は、
かなりの確率で揉めると思っている。
最初はいい。
「やりましょう」
「面白そうですね」
と盛り上がる。
店ができる。
オープンする。
お客様が来る。
みんな嬉しい。
問題は、そのあとだ。
思ったほど利益が出なかったらどうするのか。
追加のお金が必要になったら誰が出すのか。
利益が出たら、どう分けるのか。
設備が壊れたら誰が払うのか。
人を増やすのは誰が決めるのか。
店主はどこまで自由に決められるのか。
お金を出した人は、どこまで経営に口を出せるのか。
店主が辞めたくなったらどうするのか。
出店パートナーが途中で抜けたくなったらどうするのか。
こういう話は、始める時にはあまりしたくない。
未来を見て盛り上がっている時に、
「別れる時の話をしましょう」
なんて言いたくないからだ。
だから、
「まあ、その時は話し合えばいいですよ」
となる。
僕は、それが一番怖い。
その時になったら、もう利害が違っているからだ。
どちらが悪いわけでもない。
店を運営している人には、その人の生活がある。
お金を出した人には、その人のお金がかかっている。
立場が違えば、見える景色が違う。
僕は仕事柄、こういう場面をずいぶん見てきた。
人と人が組んで商売をすると、どこで意見が食い違うのか。
何を曖昧にすると、あとで問題になるのか。
どんな小さな違和感が、数年後に大きな揉め事になるのか。
揉め事を整理することは、僕の十八番で本業中の本業だ。
揉め事のプロとしての仕事の流儀は、揉めてから仲裁することではない。
どこで揉めるかを知っているから、最初から揉めにくい形をつくることだ。
だから僕らが間に入る。
単に、
「お金を出してくれる人を紹介します」
「店をやってくれる人を紹介します」
というマッチングはしない。
誰が何を担うのか。
誰が何を決められるのか。
お金をどう出すのか。
利益をどう分けるのか。
追加資金が必要になったらどうするのか。
誰かが抜ける時にはどうするのか。
うまくいかなかった時に、どう終わるのか。
始める前に、終わり方まで決めておく。
そして、始まったあとも僕らが間にいる。
店主の話も聞く。
出店パートナーの話も聞く。
必要なら、同じテーブルにつける。
どちらか一方の味方になるのではない。
僕らが守るのは、
店と、暖簾と、その関係が長く続くこと。
善意を疑っているわけではない。
むしろ逆だ。
良い関係を長く続けたいからこそ、
善意だけに頼らない。
僕らが介在する意味は、そこにあると思っている。
店をやる力はあるけれど、お金がない人。
お金はあるけれど、自分では店を運営できない人。
暖簾と店づくりの経験を持つ僕ら。
この三者が、それぞれの役割を理解して組めたら。
今までなら生まれなかった店が、生まれるかもしれない。
そして、それが十年、二十年と続く店になるかもしれない。
そこまでできて初めて、
暖簾を分けた意味がある。
