店を増やそうとすると、いつも最後に出てくる言葉があった。
「人がいない」。
確かにその通りだ。
でも、そもそも僕らが言っている「人」とは誰なんだろう。
——
「人がいません。」
これは正しい。
店を一軒増やせば、店長がいる。
料理をつくる人がいる。
サービスをする人がいる。
それを管理する人も必要になる。
今いる人たちに無理をさせてまで店を増やすなんて、僕もやりたくない。
だから「人がいないなら仕方がない」と、僕自身も店を増やすことは考えなくなった。
でも、ある時この「人」というものを一度、考え直してみた。
僕らが本当に必要としている人って、何なんだろう。
考えていくと、結論は意外なくらい当たり前だった。
良い人であること。
店の理念や考え方を理解してくれる。
料理やサービスで守るべきものを理解してくれる。
お客様に対して、ちゃんとあるべき営業をしてくれる。
問題が起きた時には話し合える。
もっと良くしようと、一緒に考えられる。
言葉にすると、本当に当たり前のことばかりだ。
でも、当たり前が一番難しい。
そして、もう一つ気づいた。
その人が、うちの社員である必要はあるのだろうか。
考えてみれば、そんな必要はなかった。
同じ会社の社員でも、考え方が通じなければ一緒に良い店はつくれない。
逆に会社が違っていても、同じ理念を理解し、同じ方向を向き、必要な時にタイムリーにコミュニケーションが取れるなら、一緒に店を育てることはできる。
そこで初めて思った。
「組織や所属が分かれていても、いいんじゃないか。」
一つの会社がすべての人を雇用して、すべての店を直営する。
それだけが店を広げる方法ではない。
それぞれが自分の商売を持っていてもいい。
それぞれが独立した経営者でもいい。
でも、暖簾の下では同じ方向を向いている。
「人がいない」から店を増やせないのではなかった。
僕らが、人を探す場所を社内だけに限定していた。
この気づきが、暖簾分けにつながった。
