#03

暖簾分けを、みんなが受け入れてくれた理由。

2025夏 | EPISODE

僕が「暖簾分けをやろう」と言ったから始まったわけではない。

社内のみんなが最後に合点してくれたのは、店を増やせるからではなく、

「外の良き人」と出会う意味だった。

——

「社員じゃなくてもいいんじゃないか」

僕の中では、暖簾分けという答えが少しずつ見えてきた。

でも、僕一人が納得しても進まない。

実際に店を守っているみんなが納得しなければ、暖簾分けなんてできない。

知らない誰かに、自分たちが大切にしてきた店の名前を渡す。

ちゃんと味を守れるのか。

ちゃんと接客できるのか。

変な店にならないのか。

心配する方が普通だ。

そこで僕がみんなに話したのは、

「店を増やせる」

という話ではなかった。

良き人と出会えるかもしれない。

という話だった。

僕は、人が進化する時には、かなりの割合で「人との出会い」があると思っている。

自分とは違う経験をしてきた人。

自分にはない技術を持っている人。

違う場所で商売をしてきた人。

でも、根っこの理念や考え方は同じ人。

そんな人と出会うことで、自分たちが今まで当たり前だと思っていたことを見直すことがある。

教えるつもりだった相手から、逆に教えられることだってある。

暖簾分けを、本店から分店へ何かを教えるだけの一方通行にはしたくない。

外にいる良き人が僕らの暖簾を受け継ぐ。

その人が自分の店を良くする。

その姿を見て、僕らの直営店も刺激を受ける。

また僕らが新しいものをつくり、それを暖簾店へ返す。

お互いが良くなっていく。

そんな関係なら、組織が違うことなんて大した問題ではない。

暖簾分けは、店を増やすためだけの仕組みではない。

僕ら自身が、外の良き人と出会うための仕組みにもなる。

この話には、みんなも少しずつ合点してくれた。

新しい人と出会えば、今まで開かなかった扉が開くかもしれない。

その先の未来なら、きっと面白い。

シンスズキ|事業家・経営参謀
ワンスインアライフタイム株式会社のオーナーでもあり、飲食、宿泊、不動産、建築など、いくつかの事業に人生をかけて取り組んでいます。ときどき、他社の経営にも首を突っ込みます。