#04

プレゼンの軍門

2025夏 | EPISODE

寿ゞきんも鈴喜も、料理は基本的にワンオペだ。

小さい店だから強い。

でも、小さい店だからこその弱点もある。

そこを逆手に取ってみんなに話したことが、最後の決定打になった。

——

暖簾分けの話をしても、みんなが簡単に首を縦に振ったわけではない。

そこで僕は、もう一つ話をした。

寿ゞきんも鈴喜も、料理は基本的にワンオペだ。

これは小さな店を運営するうえでは、とても合理的だと思っている。

でも、明確な弱点がある。

その一人が仕事をできなくなったら、店を開けられない。

事故かもしれない。

病気かもしれない。

本人がどれだけ気をつけていても、人生には何が起きるか分からない。

そうなれば、その間は休業するしかない。

そこで言ってみた。

「でもさ、同じ暖簾の仲間がたくさんいたら、もしかして助けてくれるんじゃないの?」

例えば五つの分店があり、それぞれに同じ料理を理解している人がいる。

本店の料理人が一週間店に立てなくなった時、五店から一人ずつ、一日だけ応援に来てくれたらどうだろう。

それだけで営業できてしまうかもしれない。

複数の料理人がいて、無休で営業するような分店が生まれれば、もっと助けてもらえるかもしれない。

一店舗だけで考えれば、

一人しかいない。

でも、暖簾全体で考えれば、

仲間が何人もいる。

これはまったく違う。

もちろん、都合のいい話だけはしない。

僕はちゃんと言った。

「その代わり、自分も助けに行かないといけないよ。」

自分が困った時だけ助けてもらう関係では成立しない。

どこかの店で困ったことが起きたら、今度はこちらが助ける。

本店だから偉いとか、分店だから従うとか、そういう話でもない。

同じ暖簾を掲げる店同士が、お互いの店を守る。

店が増えるほど、一店舗一店舗を守る力が強くなる。

そんな暖簾分けなら、やる意味がある。

この話をしたあたりで、みんなも、

「それなら、確かに」

となった。

僕としては、

ようやく軍門に下ったな。

と思ったわけです。

シンスズキ|事業家・経営参謀
ワンスインアライフタイム株式会社のオーナーでもあり、飲食、宿泊、不動産、建築など、いくつかの事業に人生をかけて取り組んでいます。ときどき、他社の経営にも首を突っ込みます。