まつさかうし
松阪牛を長く扱っていると、
よく分かることがある。
松阪牛なら、全部同じではない。
むしろ、
その名前が付いてから、
何を選ぶかが大事だと思っている。
松阪牛の基準は、
2002年に大きく変わった。
それ以前にあった、
肉質の「上規格以上」という条件がなくなり、
現在は個体識別や肥育地域などを軸に、
松阪牛が定義されている。
これは、
安全性やトレーサビリティという意味では、
大切な進化だった。
一方で、
同じ「松阪牛」の中にも、肉質の幅がある。
ということでもある。
だから、
僕らは、
「松阪牛だから仕入れる」
という買い方をしない。
長くお付き合いしている、
精肉卸のご主人がいる。
自分の目で肉を見て、
いいものを選ぶ。
僕らが買っているのは、
ある意味、
その人の目利きでもある。
そこから、
選び抜いたものを、
寿ゞきんに分けてもらう。
だから、
よその料理屋さんなら、
「上」
「特上」
「特選」
と分けてもおかしくないような肉も、
うちでは普通に出てくる。
僕らにとっては、それが「並」だから。
もちろん、
霜降りが多ければ、
必ず旨いわけでもない。
等級だけで、
味が決まるわけでもない。
だからこそ、
最後は人の目だと思っている。
松阪牛という看板に、
あぐらをかかない。
松阪牛かどうかではなく、
どんな松阪牛を選ぶのか。
これは、
これから暖簾を受け継ぐ人にも、
そのまま渡していきたい。
名前だけではなく、
仕入れも、
目利きも、
品質の基準も。
「松阪牛だから旨い」ではなく、
「旨い松阪牛を選んでいる」。
寿ゞきんの肉の違いは、
案外、
そんなところにある。
