鰻屋をやってみて思う。
商売としてよくできている。
もちろん簡単ではない。
仕入れも、焼きも難しい。値段だって安くない。
でも飲食店として考えると、かなり強い。
まず、何屋なのか一瞬で分かる。
鰻屋です。
説明がいらない。
お客様も、だいたい食べるものを決めて来てくれる。何十種類もの料理を仕込み、それぞれに技術を持った人を配置する必要もない。
鰻をちゃんと焼く技術は必要だ。
でも、商品を絞り込める強さがある。
そして鰻には、食べに行く理由がある。
土用の丑の日。家族の食事。少し元気をつけたい日。ちょっとしたご褒美。
日常と、ご馳走の間くらい。
さらに、大きな店でなくても成立する。
だから鈴喜の暖簾分けも、本店をそのままコピーするつもりはない。
街中なら、小さな鰻屋。
住宅地なら、家族で来られる店。
観光地なら、その土地らしい鰻屋。
立地とオーナー店主に合わせて、形は変えればいい。
でも、
鰻をちゃんと焼く。
美味しく食べてもらう。
また食べたいと思ってもらう。
ここは変えない。
十年前にもあった。今もある。たぶん十年後も食べたい。
いつの時代にも、
「今日は鰻を食べよう」がある。
だから僕がつくりたいのは、流行る店というより、
長く商えて、ちゃんと儲かる店。
暖簾分けする分店は、そこまでちゃんと整えますからね。
ちなみに鈴喜本店は、メニューが豊富で経営効率が著しく悪い。
例のごとく、生きた実験台であるがゆえに背負った、宿命の十字架なのである。
分店の皆さんには、この十字架まで暖簾分けするつもりはありません(笑)。
ナカジ、お疲れ様。
いつもありがとう。
僕は君の焼き切り鰻が、
世界一美味いと思っています。
