#046

松阪牛という商売は、まだまだ面白くできる。

2026秋 | THOUGHT

2026 秋|BUSINESS

三重で飲食店をやっていると、
松阪牛は、
あまりにも身近にある。
でも、
改めて考えると、
ものすごい素材だと思う。
全国で名前が通じる。
説明しなくても、
価値を知っている人がいる。
そして、
県外へ出れば、
その力はさらによく分かる。
こんな素材を、焼肉だけで終わらせる必要はない。
僕は、
ずっとそう思っている。

松阪牛の店というと、
まず焼肉を思い浮かべる人が多い。
もちろん、
焼肉は強い。
僕らも、
長くやってきた。

でも、
松阪牛という素材から考えれば、
商売のつくり方は、
もっとある。

網焼き。
すき焼き。
しゃぶしゃぶ。
鉄板焼き。
肉割烹。

同じ松阪牛でも、
料理の仕立て方が変われば、
店の大きさも、
客単価も、
使う部位も、
必要な設備も、
お客様の使い方も変わる。

僕は、
ここに可能性を感じている。

寿ゞきんは、
松阪牛を炭火の網焼きでいただく店だ。
焼肉店ではない。あみ焼き、網焼きなのだ。
冬はしゃぶしゃぶもやる。

個室を中心に、
一枚ずつ、
ちゃんと肉を食べてもらう。

焼肉とも違う。
ステーキとも違う。

松阪牛そのものを、どう食べてもらうか。
そこから、
店をつくってきた。

そして、
この考え方は、
今の寿ゞきん一軒だけで、
完成するものでもないと思っている。

例えば、
カウンターだけの、
小さな松阪牛の店があってもいい。

すき焼きを主役にした、
分店があってもいい。

鉄板を挟んで、
料理人とお客様が向き合う店も、
面白い。

土地が変われば、
店の形も変わる。
物件が変われば、
最適な商売も変わる。

だから僕は、
暖簾分けというものを、
同じ店をコピーして増やすこと
だとは考えていない。

大切なのは、
松阪牛という素材を、
ちゃんと扱うこと。
その価値を、
安売りしないこと。
そして、
お客様に、
「松阪牛を食べた。」
という満足を、
ちゃんと持って帰ってもらうこと。

そこを守れるなら、
店の形には、
まだまだ可能性がある。

大きな店である必要もない。
何十席も、
つくる必要もない。

むしろ、
オーナー店主が、
自分の目の届く範囲で、
松阪牛と向き合う。

そんな店が、
東京にあってもいい。
大阪にあってもいい。
京都でも、
地方都市でもいい。

僕がこれから、
暖簾を分けていきたい理由の一つも、
そこにある。

店を増やしたいだけではない。
松阪牛という素材から、
まだ世の中にない商売をつくってみたい。

寿ゞきんの次に、
どんな松阪牛の店が生まれるのか。
実は僕自身も、
まだ全部は決めていない。

暖簾を受け継ぐ人。
その人が見つけた物件。
その街。
そこにいるお客様。

それを見ながら、
一緒に考えればいい。

松阪牛の専門店は、まだ一種類じゃない。
僕は、
そこに結構大きな可能性があると思っている。

シンスズキ|事業家・経営参謀
ワンスインアライフタイム株式会社のオーナーでもあり、飲食、宿泊、不動産、建築など、いくつかの事業に人生をかけて取り組んでいます。ときどき、他社の経営にも首を突っ込みます。