#030

景色は、あるだけでは商品にならない。

2026秋 | THOUGHT

景色は、所有するものではなく、切り取るもの。

景色は、所有するものではなく、切り取るもの。

海が見える。

山が見える。

街の灯りが見える。

それだけで、

土地の価値は確かに上がります。

でも宿をつくる側からすると、

景色があるだけでは、まだ素材です。

どこから見るのか。

どう見せるのか。

そして、

その景色の中でどう過ごしてもらうのか。

そこまで考えて、

初めて景色は商品になる。

「オーシャンビューです。」

そう聞いて現地へ行く。

確かに海は見える。

でも、

立っている時しか見えない。

椅子に座ると窓枠で消える。

ベッドに寝ると空しか見えない。

風呂に入ったら塀しか見えない。

これでは、

せっかくの景色がもったいない。

だから僕は現地へ行くと、

立つ。

座る。

しゃがむ。

時には地面近くまで目線を落とす。

宿でずっと立っている人なんて、

いないからです。

**ソファに座った時。

ベッドに寝た時。

湯につかった時。

その目線から何が見えるのか。**

僕が見たいのは、

そっちです。

そして、

景色は広く見せればいいわけでもありません。

隣の家。

電柱。

道路。

駐車場。

余計なものを切って、

美しいところだけ残した方が強くなることもある。

僕は、

借景という考え方が好きです。

向こうの山も使う。

海も使う。

空も使う。

遠くの街の灯りだって使う。

こちらがお金を払ってつくったものではないのに、

窓の切り方一つで、

自分たちの空間の一部になる。

こんなに贅沢なことはありません。

そして、

景色には一番美しい時間があります。

朝がいいなら、

その景色を見ながら朝食を食べてもらう。

夕景がいいなら、

その時間に酒を飲める場所をつくる。

夜空がいいなら、

照明を考える。

景色と、人の時間を合わせる。

そうすると、

窓の位置も、

風呂の場所も、

ベッドの向きも変わってきます。

だから僕にとって景色は、

建築が完成してから、

「ちなみに海も見えます」

と付け加えるものではありません。

景色から、建築を考えることだってある。

宿泊事業なら、

それはそのまま商品力にもなります。

窓の向こうに海がある。

湯船の先に山がある。

ベッドから朝日が見える。

その一枚を見て、

「ここに泊まりたい。」

と思う人がいる。

海が見える土地を持つことと、

海を商品にすることは違う。

景色は、所有するものではなく、切り取るもの。

そして、

その切り取った景色の中で、

人にどう過ごしてもらうのか。

そこまで考えるのが、

僕にとっての宿づくりです。

シンスズキ|事業家・経営参謀
ワンスインアライフタイム株式会社のオーナーでもあり、飲食、宿泊、不動産、建築など、いくつかの事業に人生をかけて取り組んでいます。ときどき、他社の経営にも首を突っ込みます。