#025

料理をつくらない人も、店をつくっている。

2026秋 | THOUGHT

料理人だけが、店をつくっているわけではない。

料理人だけが、店をつくっているわけではない。

飲食店というと、

料理人が主役に見えます。

もちろん料理は大事です。

うまくなければ、

僕はいい店だとは思わない。

でも、

料理をつくる人だけが、店をつくっているわけではありません。

入口で迎える人。

電話を取る人。

料理を運ぶ人。

掃除する人。

最後に見送る人。

全員が、

その日の店をつくっています。

僕は料理人ではありません。

だからなのか、

料理以外のことも、ものすごく気になります。

入口。

照明。

椅子。

音楽。

器。

温度。

サービス。

電話。

料理を出すタイミング。

帰りの挨拶。

美しい店でも、

人が冷たければ残念な店になる。

逆に古い店でも、

人が良くて、

なぜかまた行きたくなる店がある。

店の空気は、人がつくる。

例えば電話。

お客様にとって、

店との最初の接点かもしれません。

そこで、

やたら声が大きい。

やたら早口。

本人に悪気なんてない。

でも、

残念賞。

まだ一皿も食べていないのに、

店の印象はもう始まっています。

予約も同じです。

名前を覚えている。

苦手なものを覚えている。

記念日だったことを覚えている。

でも、

これ見よがしにやらない方が粋だと思っています。

「前回これ飲まれてましたよね。」

より、

「前回気に入られていたものの親戚を、ちょっと仕入れてみたんです。」

僕なら、

こっちの方が嬉しい。

「覚えていますよ」というサービスではなく、

覚えていたから、何かしておいた。

しかも、

さらっと。

僕はそういうサービスが好きです。

そして、

料理人が最高の状態までつくった一皿も、

最後はサービスの人に渡されます。

運ぶのが遅ければ、

温度が落ちる。

置き方が雑なら、

料理まで雑に見える。

だからホールは、

料理をA地点からB地点へ運ぶ仕事ではない。

料理人から受け取った一皿を、
お客様のところで完成させる仕事でもある。

僕は、

新人だから何も分からなくて当たり前、

とは思っていません。

料理名も、

席番号も、

電話の取り方も、

まだ知らないかもしれない。

でも、

何が善かれかを考えることは、初日からできる。

やってみる。

違った。

直す。

またやる。

知らないことと、

考えないことは、

まったく違います。

アルバイトだから。

ホールだから。

新人だから。

そうやって、

自分の仕事を小さくしないでほしい。

お客様が困っている。

気づいた。

まだ自分で判断できないなら、

店長に伝えればいい。

それも立派な仕事です。

僕自身、

今ではほとんど店にいません。シーラカンス並です。

だから、

今日の店をつくっているのは、
今日そこにいるみんなです。

料理人も。

サービスも。

アルバイトも。

店長も。

そして僕が久しぶりに食べに行った時、

「あれ、こんなにいい店だったっけ。」

と思わせてほしい。

それなら最高です。

料理をつくらない人も、

店をつくっている。

今日一人のお客様に気づく。

今日一つ、店を良くする。

その積み重ねが、

いい店をつくるのだと思っています。

シンスズキ|事業家・経営参謀
ワンスインアライフタイム株式会社のオーナーでもあり、飲食、宿泊、不動産、建築など、いくつかの事業に人生をかけて取り組んでいます。ときどき、他社の経営にも首を突っ込みます。