寿ゞきんも鈴喜も、料理は基本的にワンオペだ。
小さい店だから強い。
でも、小さい店だからこその弱点もある。
そこを逆手に取ってみんなに話したことが、最後の決定打になった。
——
暖簾分けの話をしても、みんなが簡単に首を縦に振ったわけではない。
そこで僕は、もう一つ話をした。
寿ゞきんも鈴喜も、料理は基本的にワンオペだ。
これは小さな店を運営するうえでは、とても合理的だと思っている。
でも、明確な弱点がある。
その一人が仕事をできなくなったら、店を開けられない。
事故かもしれない。
病気かもしれない。
本人がどれだけ気をつけていても、人生には何が起きるか分からない。
そうなれば、その間は休業するしかない。
そこで言ってみた。
「でもさ、同じ暖簾の仲間がたくさんいたら、もしかして助けてくれるんじゃないの?」
例えば五つの分店があり、それぞれに同じ料理を理解している人がいる。
本店の料理人が一週間店に立てなくなった時、五店から一人ずつ、一日だけ応援に来てくれたらどうだろう。
それだけで営業できてしまうかもしれない。
複数の料理人がいて、無休で営業するような分店が生まれれば、もっと助けてもらえるかもしれない。
一店舗だけで考えれば、
一人しかいない。
でも、暖簾全体で考えれば、
仲間が何人もいる。
これはまったく違う。
もちろん、都合のいい話だけはしない。
僕はちゃんと言った。
「その代わり、自分も助けに行かないといけないよ。」
自分が困った時だけ助けてもらう関係では成立しない。
どこかの店で困ったことが起きたら、今度はこちらが助ける。
本店だから偉いとか、分店だから従うとか、そういう話でもない。
同じ暖簾を掲げる店同士が、お互いの店を守る。
店が増えるほど、一店舗一店舗を守る力が強くなる。
そんな暖簾分けなら、やる意味がある。
この話をしたあたりで、みんなも、
「それなら、確かに」
となった。
僕としては、
ようやく軍門に下ったな。
と思ったわけです。
