天然資源を、宿泊体験という商品に変える。
温泉付き。
源泉掛け流し。
天然温泉。
もちろん、温泉はものすごく強い資産です。
でも、
温泉があることと、
温泉をちゃんと商品にできていることは、
まったく別の話です。
宿の相談を受けると、
僕は温泉についてかなり細かく訊きます。
泉質。
湯量。
温度。
源泉の場所。
引湯経路。
温泉好きだからというだけではありません。
後から簡単につくれない資産だからです。
サウナも、プールも、建物も、
お金を出せばつくれる。
でも、その土地に天然温泉があるかどうかは、
こちらの都合では決められません。
だから温泉があると聞くと、
まず思う。
使い切らないともったいない。
ところが、
いい温泉があるのに、
浴槽にお湯を入れたところで仕事が終わっている宿は結構あります。
僕が考えたいのは、
その先です。
どこで入るのか。
何が見えるのか。
風はどう感じるのか。
朝と夜ではどう違うのか。
つまり、
温泉ではなく、
温泉に入っている時間を設計する。
景色があるなら、
湯につかりながら見られないか。
海を見る。
山を見る。
庭を見る。
空を見る。
温泉と景色が一つになった時、
初めて、
そこでしかできない宿泊体験になる。
だから僕は露天風呂が好きです。
露天風呂という設備が好きなのではなく、
温泉と、その土地をつなげられるからです。
そしてこれは、
収益にもつながります。
宿は、
泊まる前に売らなければならない。
露天風呂から海が見える。
森の中に湯船がある。
その一枚の写真で、
「ここへ行きたい」
と思ってもらえる。
そうなれば、
ADRにも稼働率にも効いてくる。
だから温泉は、
単なる設備ではありません。
事業の収益をつくる装置にもなる。
そのために建築がある。
窓をどこにつける。
浴槽をどこに置く。
何を隠して、
何を見せる。
すべて、
湯につかった人の目線から考える。
そして、
温泉だけで終わらない。
湯から上がったあと、
どこで過ごすのか。
何を飲むのか。
何を見るのか。
料理とどうつながるのか。
宿泊体験は、
設備の集合ではありません。
全部つながって、一泊になる。
だから僕は、
流行っている設備を足す前に、
まず、その土地がすでに持っているものを使い切りたい。
温泉があるなら、
温泉を磨く。
景色があるなら、
景色を切り取る。
庭があるなら、
庭を活かす。
それでも足りなければ、
新しいものを足せばいい。
温泉がある。
それだけでは、
まだ素材です。
どこで入り、
何を見て、
何を感じてもらい、
そして、
その体験にいくら払ってもらえるのか。
そこまで設計して初めて、
温泉という天然資源が、
宿泊事業の商品になる。
